はじめに
経済アナリストの森永卓郎さんは、2011年にお父さんを亡くし、相続で非常に大変な経験をしました。この体験を森永さんは「相続地獄」と振り返っています。
「『相続地獄』を経験した森永卓郎さんに聞いた、『親の生前に最低限しておくべきこと』」というSUUMOに掲載された記事は、終活を考える多くの人々にとって非常に参考になる内容です。
終活は、他人の経験から学ぶほうが速いし確実です。
元の記事はこの記事はとても長いため、要点をかいつまんで、どこが重要なポイントなのかを解説していきます。
森永さんが経験した「相続地獄」とは?
森永さんは2011年にお父さんを亡くし、その後、相続に関するとても大変な経験をしました。森永さんの経験を箇条書きで整理してみます。
- お父さんの資産がどれくらいあったのか全然わからなかった。
- 郵便物を調べて、銀行口座や証券口座があるかどうかを確認することから始めた。
- 口座を確認するためには、お父さんが生まれてから亡くなるまでに住んでいた全ての自治体から戸籍謄本を集めたり、相続人全員の合意書が必要だった。
- お父さんに借金があるかがわからなかった。
- 相続放棄ができないタイミングで借金が見つかる可能性もあり、それがとても不安だった。
- 不動産の相続についても、実家のマンションの評価をするために税理士に頼む必要がありました。当初の見積もりよりも200万円の値引き交渉をしたものの、結局はかなりの額を支払うことになった。
- 不動産の相続税は現金で支払わないといけなくて、その期限はたったの10ヶ月。
- マンションを売る準備や荷物を片付けることに追われて、不動産相続がどれほど厳しいかを実感した。
終活を成功させる4つのポイント
森永さんが経験した相続地獄から、私たちが学べることは何でしょうか。
- 資産のありかがわからないと、すごく大変:郵便物を調べて銀行に問い合わせるという手順が、本当に必要になるなんて思いもしませんでした。そして、住んでいたすべての自治体から戸籍謄本を集めたり、相続人全員の合意書が必要だなんて、本当に大変そうです。
- 借金の有無がわからないのは、すごく怖い:相続放棄ができないタイミングで借金が見つかったらどうしようという不安は、かなりのプレッシャーだと思います。
- 税理士への報酬は馬鹿にならない。200万円も値引きしたという話を聞いて、「もしかして20万円の間違いじゃないの?」と思うほどです。
- 当然ながら、相続税は「現金」で支払う:税を払うために、資産を現金にして、それを10ヶ月以内にやらなければいけないのも、非常に厳しい条件だと思いました。売却の準備や遺品の整理にどれだけ時間がかかるかを考えると、本当に時間が足りないと感じます。
それぞれのポイントについて、さらに深ぼって学んでみることにします。
まずは故人の銀行口座についてです。実は2011年から制度の改善がすすんで、相続手続きの手間が一部改善されました。
「法定相続情報一覧図」を使おう
森永さんの相続の経験は2011年のことでしたが、その後、2017年から「法定相続情報証明制度」が始まり、相続手続きがより簡単にできるようになりました。
故人の銀行口座を調べる際、以前は各金融機関に対して戸籍謄本を何度も提出する必要がありましたが、「法定相続情報一覧図の写し」を使えば、これ一枚で済むことが多いです。この一覧図には、故人と相続人の情報や関係性が簡潔にまとめられているため、手続きのたびに同じ書類を繰り返し準備する必要がなくなります。
相続後に借金が発覚したらどうする?
森永さんのお父さんには借金はありませんでしたが、もし仮に相続後に、まさかの借金発覚の場合、どうなるのでしょうか。この場合の選択肢は2つです。
相続放棄の申立をする:相続放棄をすれば、借金を含むすべての財産を引き継がずに済みます。通常、相続開始から3か月以内に手続きをする必要がありますが、後から借金があることがわかった場合、例外的に延長が認められることもあります。
債権者との協議を行う:借金を受け入れた上で、返済方法や金額の見直しを債権者と交渉します。返済計画を立てるには、専門家のサポートを受けるのが安心です。
たとえ借金があっても、相続した資産とあわせてプラスであれば、借金を返すことを選択するのがよいでしょう。もしマイナスの場合、本来は支払わねばなりませんが、相続時に借金の問題をしらなければ、期限を超えていても相続放棄が認められるケースがあることを覚えておきましょう。詳細は専門家に相談してください。
相続申告では税理士にいくら払うの?
森永さんは、不動産や金融資産の評価を税理士に依頼しており、報酬は相続額の3%だったといいます。
相続税申告を税理士に依頼した場合、一般的な報酬の相場は遺産総額の0.5%〜1.5%です。例えば5000万円の遺産であれば25〜75万円の報酬が目安となります。
ただし、税理士報酬が高くなるケースもあります。非上場株式や特殊な形状の土地、海外資産などは評価が難しく、評価作業が必要なため報酬が加算されます。
また、申告期限が近い場合、急いで対応するための加算報酬が発生します。また、相続人の数が多い場合も、一人増えるごとに基本報酬の10〜15%が加算されることが一般的です。
森永さんの場合、おそらくお父さんが様々な資産をもっており、評価が大変だったのでしょう。「当初の見積もりから200万値引いてもらった」とありますから、資産は全体で数億あると推定されます。
相続税納付のポイント
森永さんの言うとおり、相続税の申告と納付は、相続が発生したことを知った日の翌日から10ヶ月以内に行わなければなりません。
例えば、被相続人が1月15日に亡くなった場合、期限はその年の11月15日です。土日祝日が納付期日の場合は、翌平日が期限となります。
納付まで10ヶ月ありますが、不動産しか遺産がないケース、遺産分割協議がスムーズに進まない場合は、時間が足りませんから、早め早めに動く必要があります。
まとめ
森永卓郎さんの相続体験から、以下の重要なポイントを学ぶことができます:
- 事前に親の資産状況を把握することの重要性
- 「法定相続情報一覧図」を活用して手続きを簡略化する
- 相続後に借金が発覚した場合の対処法(相続放棄や債権者との協議)
- 税理士への依頼費用の目安と変動要因
- 相続税の申告・納付期限(10ヶ月以内)を意識し、早めの行動が必要
これらの教訓を踏まえ、自身や家族の終活に備えることで、「相続地獄」を避け、スムーズな相続手続きを行うことができるでしょう。