人間関係 財産と相続の整理

【相続問題の恐怖】突然現れた姉に訴訟され、自宅を失った話

突然ですが、皆さんに質問です。

「相続問題」と聞いて、どんなイメージを持ちますか?

「遺言があれば大丈夫」「うちにはそんな揉め事なんて起きない」——そう思っていませんか?

実は、ある日突然「身内」が現れ、訴訟を起こされるというケースも決して珍しくありません。今回ご紹介するのは、不動産相続が引き金となり、最終的に自宅を失ってしまったある女性の実際の事例です。

横浜りんどう法律事務所の事例をもとにしたエピソードで、不動産相続が他人事ではない理由を学びましょう。適切な準備を怠ると、思いもよらない事態に陥るかもしれません。

この記事を読むことで、以下のポイントについて知ることができます。

  • 相続トラブルの現実と怖さ
  • 不動産相続で起こりがちな問題
  • トラブルを未然に防ぐための対策

今の平穏を守るためにも、ぜひ最後までお付き合いください。

姉に訴訟され自宅を失ったエピソード

1. 静かな日常の崩壊

私はこの家で30年以上暮らしてきた。両親が残した思い出の詰まった家。父が亡くなり、母もその後を追うように旅立ってからは、私一人でここを守ってきた。だが、そんな日常は突然の手紙で崩れた。「相続分を整理するため、この家を売却したい」――送り主は長年疎遠だった姉だった。

2. 拒否から始まった争い

私にはこの家を手放すつもりはなかった。「家族の思い出が詰まっている」「ここが私の生活の全てだ」と何度も伝えた。それでも姉は引き下がらず、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てたのだ。

裁判所での話し合いは険悪だった。姉は「公平に分割しよう」と言い、私は「生活の場を奪わないでほしい」と訴えた。だが、調停は決裂し、裁判所は「家を姉妹の共有財産とする」という審判を下した。

3. 法的圧力に追い詰められて

審判が終わっても状況は変わらなかった。姉はさらに訴訟を起こし、「共有物分割訴訟」で私に売却を迫った。さらに、「家を独占的に使っているのだから賃料相当額を支払え」との請求までしてきた。

「競売になれば、価値が大幅に下がる」と弁護士は言う。心の中では必死に抵抗したが、現実の重みが私を押しつぶそうとしていた。

4. 任意売却という決断

訴訟が進む中、姉の弁護士が市場価格に近い高値での買い手を見つけた。これが最後の選択肢だった。「競売になるよりマシ」と頭では理解していたが、心は受け入れられなかった。

最終的に私は任意売却に同意した。売却額は姉と分け合い、家族の争いに終止符を打つことができた。それでも、30年間暮らした家を手放す喪失感は計り知れない。

5. この経験からの教訓

今、振り返ると思うのは一つ。「相続問題は放置するべきではない」ということだ。家族の絆を守るためには、事前の話し合いと適切な手続きが必要だ。あの時、もっと早くに向き合っていれば、家族の関係も、そして私の生活も違った形で守られていたかもしれない。


なぜ二女は売却せざるを得なかったのか?

あらためて、二女の家が売却されることになったのか。その経緯を見ていきましょう。

自宅が両親の名義のままだった

実はこのケース、二女の自宅は亡くなった両親の名義のままでした。本来はなくなったときに相続方法を決めなければなりません。遺産分割調停では解決できなかったため、遺産分割審判で「では自宅を共有のものとしなさい」と決定されたのです。

  • 遺産分割調停
    • 意味:相続人全員で遺産をどう分けるか話し合いがつかない場合に、家庭裁判所で行う話し合いの手続き。第三者(調停委員)が間に入り、解決を目指します。
    • 本件での役割:二女は調停で売却を拒否しましたが、話し合いは決裂し次のステップへ進みました。
  • 遺産分割審判
    • 意味:調停で解決できなかった場合、裁判官が法律に基づき遺産の分け方を決定します。
    • 本件での役割:裁判所は「姉妹で不動産を共有する」という審判を下しましたが、これで問題は終わりませんでした。

姉に協力する法的義務が発生

遺産分割審判で「姉妹が共有」という決定が下された時点で、二女が単独で家を所有することは難しくなりました。共有状態では、他の共有者(この場合は長女)に利用や売却の協力を求められる法的な義務が生じます。

協力しなければ強制的に売却される

それでも二女が協力に応じない場合、共有物分割訴訟となります。最終的に競売となる可能性が高く、それでは不動産が市場価格よりも安く売却されるため、経済的損失が大きくなります。

  • 共有物分割訴訟
    • 意味:共有状態を解消するための裁判。裁判所は「不動産を競売し、売却代金を持分割合で分ける」などの判断を下します。
    • 本件での役割:二女にとって競売は避けたい選択肢であり、最終的に任意売却を選ぶ要因になりました。

法的・経済的なプレッシャー

賃料相当額の賠償請求や訴訟費用などの負担が、二女の精神的・経済的負担を増大させ、弁護士のアドバイスもあり、競売を避けるために任意売却が選ばれ、売却を受け入れる決断に至りました。

  • 任意売却
    • 意味:相続人が同意して、相場に近い価格で不動産を売却すること。競売より高値で売れる可能性があります。
    • 本件での役割:弁護士と不動産業者が協力し、競売を回避するために行いました。

あなたにも関係があるかもしれません

親が家をもっていて子どもが2人以上いる場合、子どもはいつか必ず亡くなった両親の自宅をどう相続するかを話し合って決めなければなりません。

「自分は一人っ子だから関係ない」と思う方もいるかもしれませんが、あなたの大切な人はどうでしょうか。パートナーの家で相続問題がおきたとき、あなたの生活にも影響が出るかもしれません。

相続問題は放置すると今回のように複雑化し、家族を引き裂く原因になります。

  • 相続人が複数いる場合
  • 不動産が主な遺産の場合
  • 家族間の関係が疎遠な場合

こういったケースだと相続問題が複雑でトラブルに発展しやすいもの。今回のケースのように、自宅から追い出される…なんてことがないよう、相続トラブルには気をつけていきましょう。

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