終活の基本

おひとりさま終活は、認知症・相続トラブルに備えよう

おひとりさま終活

認知症・相続トラブルへの

備え方

今の社会では、「おひとりさま」として生きていくことが前よりも普通になっています。2022年には、65歳以下の単身世帯が873万世帯に達しました。また、終活について行政や司法書士に相談する人も年々増えていて、「おひとりさまの終活」への関心が高まっていることがわかります。でも、「終活」と聞くと不安に感じたり、どこから始めていいのかわからない人も多いかもしれません。この記事では、おひとりさまが安心して未来を迎えるための終活のステップを紹介します。

おひとりさま終活の特徴:普通の終活との違い

項目普通の終活おひとりさま終活
目的家族に負担をかけず老後の不安を減らす孤独死を防ぐ、医療や介護の準備、葬儀や相続を自分で決める
活動内容遺産相続の整理、医療や介護の希望をまとめる、エンディングノートを書く、物の整理エンディングノートを書く、身元保証人の確保、死後の手続きをお願いする契約、見守りサービスを利用する
重要性人生を振り返り、老後を豊かにするための活動周りに迷惑をかけないための準備、自分の意思をはっきりさせること

この表からもわかるように、おひとりさま終活では孤独死を防いだり、医療や介護の準備など、より自立した備えが必要です。また、家族の代わりに支援してくれる体制を作ることがとても大事です。

おひとりさまの心配事

おひとりさまの終活では、家族がいないからこその心配があります。

  • 自分の意思とは違う医療や介護を受けるかもしれない:家族がいないと、もしものときに自分が望んでいない医療や介護を受けることになるかもしれません。特に、いつ事故にあうかわからないし、急な病気で寝たきりになるかもしれないというリスクは常にあります。
  • 認知症になったときのリスク:おひとりさまの場合、認知症になると守ってくれる家族がいないため、財産が勝手に処分されたり、詐欺にあうリスクが高くなります。
  • 孤独死のリスク:ひとりで亡くなってしまった場合、誰にも発見されないまま数日が過ぎることも考えられます。誰にも気づかれないまま発見されるのは避けたいという不安もあるでしょう。

動けるうちに終わらせておく

毎月多くの終活相談にこたえるグリーン司法書士法人の山田さんは、「自分の意思で動けるうちに終わらせておくのが良い」と語ります。

「できれば60代で、まだ頭も体も元気なうちに考え始めるのが理想で、60代後半までには対策を終わらせておくと安心です。おひとりさまの場合は、早めに自分の意思で動けるうちにやっておくのがいいですね。周りの人への負担をかけないよう備えておけば、自分も安心できます」

認知症のリスクと備え

認知症になってしまうと、自分でできることが少なくなります。例えば、銀行でお金を下ろしたり、預金を解約したりしたいときに、銀行が「認知症の問題がある」と判断すると、その手続きを拒否されることがあります。これは本人の安全のためですが、自分の意思を実現できなくなる恐れがあります。

他にも認知症の影響としては、こういった困難があります。

  • 預金の管理:毎日の出金や預金の管理が難しくなり、生活資金がうまく使えなくなることがあります。
  • さまざまな契約:携帯電話や保険など、生活に必要な契約の更新や変更、新しい契約を結ぶことができなくなります。
  • 介護の選択:どのような介護を受けたいかという希望を伝えられなくなり、周りの判断に頼ることになります。
  • 住む場所の選択:どの施設や住まいで過ごしたいかも自分で決められなくなり、希望と違う場所で生活しなければならないこともあります。

つまり、認知症が進むと、自分の財産や生活に関する大事な決定が自分でできなくなる、ということです。そのため、元気なうちに備えをしておくことが非常に重要です。

判断力があるうちに後見人を選んでおく

認知症などで判断が難しくなったときに備えて、「成年後見制度」があります。この制度では、家庭裁判所が後見人を決めて、弁護士や司法書士、社会福祉士などがその役割を果たします。

まだ判断力があるうちに、自分で後見人を選ぶこともできます。子どもや親戚、知り合いの専門家に後見人になってもらうことが一般的です。後見人にお願いするには、公正証書を使って契約を結ぶ必要があります。各都道府県にある公証役場に相談することで手続きを進められます。

意外と多い相続トラブル

おひとりさまの場合、相続人は甥や姪になることが多いです。ですが、甥や姪とはほとんど会ったことがない場合もあり、相続の話し合いが進まなかったり、連絡が取れないこともあります。

2021年には、全国で13,000件以上の遺産分割トラブルが発生しました。遺産相続というと大金をイメージするかもしれませんが、実際のトラブルの8割は5,000万円以下、3割は1,000万円以下のケースです。資産が多くなくてもトラブルは起こるのです。

遺言書が必要

トラブルを避けるためには「遺言書」が必要です。遺言書には、自筆で書くものと公正証書で作るものの2種類があります。

遺言書の種類長所短所
自筆証書遺言いつでも簡単に書けて費用がかからない法的に無効になることがある、死後に見つからないことがある
公正証書遺言専門家が作成し、紛失や改ざんの心配がない作成に時間と費用がかかる

自筆の遺言は手軽に書けて費用もかからないのでメリットがありますが、法的な条件を満たさずに無効になることもあります。公正証書の遺言は専門家が作成するため安心ですが、費用と時間がかかります。それでも確実にしたい場合は、公正証書での遺言をおすすめします。

終活は「エンディングノート」から始めよう

おひとりさまの終活で一番おすすめなのは「エンディングノート」を書くことです。

エンディングノートには、以下のようなことを書きます:

  • 自分の希望する医療や介護:万が一のときにどのような医療を受けたいか、どんな介護を希望するか。
  • 葬儀に関する希望:どのような葬儀をしてほしいか、宗教や規模、音楽など。
  • 財産に関する情報:預金口座や保険、貴重品の保管場所など、財産に関する情報。
  • 家族や友人へのメッセージ:家族や友人に感謝の気持ちや伝えたいことを自由に書く。
  • 友人や親戚の連絡先:万が一の時に連絡を取ってほしい人の名前、電話番号、メールアドレス。

おひとりさまにとって重要なのは「友人や親戚の連絡先」です。独り身だと、周囲の人は亡くなったときに連絡する友人や親戚がわからない場合があります。また、スマホが普及している今、パスワードがわからないと連絡先を開けず困ることもあるでしょう。

また、「財産に関する情報」も大切です。持っている口座や保険といった財産も、亡くなると凍結されてしまいます。ネット銀行だと、ログイン情報がないため預金を引き出せず困るケースもあります。

エンディングノートがあれば、もしものときに家族や友人に自分の意思を伝えることができ、トラブルが減ります。また、自分がどんな人生を送りたいか、何を大事にしているかを改めて考えるきっかけにもなります。

まとめ:楽しみを見つけよう

終活は「終わり」について考えることですが、同時に「今をどう楽しむか」を考えることでもあります。新しい趣味を見つけたり、やりたいことリストを作ってそれを達成していくことが、毎日の生活に新しい意味を与えてくれます。

おひとりさまの終活は、自分の人生を大切にするための準備です。何をしたらいいのか迷ったら、まず小さなことから始めてみましょう。エンディングノートを書いたり、少しずつ物を整理したりして、自分らしい未来を迎える準備を進めていきましょう。

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